前回は私の相撲歴を書きましたが、この本は引退した”横綱 稀勢の里”についての評論です。
稀勢の里の師匠は元横綱 隆の里です。
初代若乃花(二子山親方)の弟子にあたり、土俵際こそが重要との指導を受けたそうです。
足が俵にかかってからが勝負という教えが若乃花,隆の里、稀勢の里に伝えられてきたことが、この本でわかりました。
稀勢の里が度々見せた土俵際の逆転劇は、50年にも及ぶ長きにわたる部屋の伝統によるものでした。
文芸春秋12月号に稀勢の里(荒磯親方)の手記が載っています。
文藝春秋12月号
ちょっと小さいですが、高倉健の次の次です。
この手記にも書いてありますが、あの新横綱の場所で13日目に大怪我をします。
12日目まで全勝でした。隆の里は新横綱で全勝優勝を飾っています。
亡き師匠と同じ全勝優勝で並びたく、左一本では無理かなと思いつつあのような相撲になったとのことでした。
翌日,鶴竜にあっさり負け、千穐楽(手記では千秋楽とは書かずこの字を使っている)も大関照ノ富士にあっさり負けると思いきや、右手一本の投げで勝ち、優勝決定戦でも同じような相撲で勝ち、涙の優勝となりました。
怪我のために最大の武器である左おっつけが使えず、引退に追い込まれてしまいました。
横綱昇進の頃が、彼の全盛期で角界一であったと思います。
それでも、悔いはないと引退、その後のNHKでの解説を聞いて、そこまで相撲を愛し、研究していたのかと驚かされ、好きになりました。
2019年の九州場所で、元関脇嘉風(引退)がゲストで登場し、現役最高の取り組みに稀勢の里戦を挙げていました。
彼が言うには、相撲には負けましたが、最高の一番とのことでした。
この2人が、親方になるので、素晴らしい力士を育成してくれると信じています。
嘉風が最後に白鳳に勝った一番は、白鳳の張手とエルボースマッシュを封じる立ち合いで圧勝しました。
ほとんど毎日張り手とエルボーで勝ち進む横綱、それを厳しい相撲というアナウンサーや解説者、注意もできない相撲協会、残念な状態です。
稀勢の里なら、横綱らしい相撲を見せてくれただろうにと思いますが、良い指導者になって相撲界を盛り上げてくれることを心から祈ります。
完